知っておきたい!ホルモン補充療法(HRT)について3
Q3 HRTを始めるときの注意点は?
A 閉経後5年以内に開始を 継続期間は医師と相談
HRTを始める年齢は、遅くとも50代半ばぐらいまで、閉経後5年以内が望ましいとされています。更年期症状が出たら、なるべく早く始めたほうが、よい効果が得られます。スタート時期が遅くなると、動脈硬化の予防効果はほとんど得られなくなります。HRTはタイミングが大切な治療なのです。
以前は「HRTを5年以上続けると乳がんのリスクが高まる」とされ、治療は5年以内に限られていました。しかし近年は、そうした評価に科学的根拠はなく、「医師の管理下であレバ、60歳を超えて投与を続けてもかまわない」との認識が一般的になっています。健康状態を定期的にチェックしていれば、使用期限はありません。
エストロゲンは女性の健康を守ってくれるホルモンですが、一方で、子宮体がんや乳がんのように、エストロゲンが増えることでリスクの高まる病気もあります。子宮内膜症、子宮筋腫、血栓症、卵巣がんなども、エストロゲンの影響で増える病気です。そのため、これらの病気を治療中の人や、経験したことのある人は、状況によってHRTは受けられなかったり(禁忌)、慎重な検討が必要だったり(慎重投与)する場合があります。そうしたケースでは、漢方薬やサプリメントなどHRTとは別の方法で、更年期症状を改善することがすすめられます。
Anetis(アネティス) 2017冬号 女性の体なんでも相談室より
※こちらは2017年12月時点の情報/記事になります
■ 回答者■
【京都府立医科大学 産婦人科学教室 教授/附属病院長 北脇 城(きたわき じょう)さん】
1981年京都府立医科大学卒業。米国バッファロー医学財団研究所留学、社会保険京都病院産婦人科部長等を経て2008年より現職。専門は生殖内分泌学、子宮内膜症、不妊症、女性のヘルスケア、腹腔(ふくくう)鏡下手術など。オフタイムにはドラムス奏者としてステージに立つ。