気をつけよう!妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群4


Q4 治療法や緊急時の対処法は?

A 一番の治療法は「分娩」 産後は慢性化に注意を


 高血圧の治療というと、まず減塩食を思い浮かべるかもしれません。ある程度の減塩は大切ですが、基本的に食事療法は効果がなく、極端な減塩はかえって症状を悪化させることがわかっています。
 妊娠していない人では、収縮期血圧が250mmHgを超えると、脳の血流量の調整が効かなくなって脳出血や脳梗塞を起こすようになります。
しかし、妊娠中は160〜180mmHg程度でも、同様の危険性があるため、160mmHgを超えた場合は「重症妊婦高血圧症候群」と診断し、安静や降圧薬などによる入院治療を行います。ただし、血圧は140mmHg以下に下げると赤ちゃんの具合が悪くなることがあります。薬による管理は、緊急事態に対処できる集中治療室を備えた病院で、慎重に行うことが大切です。
 母児の状態が悪くなり、重篤な合併症のリスクが高まったときは妊娠の継続をあきらめ、分娩を速やかに終わらせます。高血圧の人は術後の回復が遅く帝王切開はなるべく避けたいのですが、陣痛のストレスによる血圧上昇の恐れもあり、結果的に4〜5割が帝王切開になります。
 分娩後、多くは2〜3日で高血圧の症状は改善しますが、重症化して内臓や血管にダメージを受けている人は、慢性の高血圧や腎機能障害になる可能性があります。産後6〜12週間をめどに、しっかり治して後遺症を残さないようにしましょう。
 

Anetis(アネティス) 2017秋号 妊娠なんでも相談室より

※こちらは2017年9月時点の情報/記事になります


■ 回答者■


【葛飾赤十字産院 副院長 鈴木 俊治(すずき しゅんじ)さん】

1988年に長崎大学医学部卒業。日本医科大学付属病院産科婦人科学教室入局、葛飾赤十字産院産婦人科派遣を経て米国ロマリンダ大学胎児生理学教室へ研究留学。帰国後に日本医科大学産科婦人科学講師、同助教授、東京臨海病院産婦人科部長を経て2006年より現職。