妊娠中に気をつけたい感染症について教えてください


初期、中期、後期妊婦健診感染症検査を実施します。

妊婦健診の検査には、風疹、B型肝炎ウイルスなど、お母さんから赤ちゃんへ感染すると先天異常や重大な病気につながる恐れがある感染症に関する項目が含まれています。妊娠8~10週前後の初期に血液検査で調べるのが、風疹ウイルス抗体、B型肝炎抗原、C型肝炎抗体、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)抗体、梅毒血清反応です。2014年ごろから若い女性に増えている梅毒では病原体が胎盤を通して母子感染すると、流死産につながったり、赤ちゃんが先天性梅毒を発症したりします。

HIV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス)抗体と性器クラミジア検査は、妊娠30週ごろまで行います。HTLV-1は主に母乳によって感染を起こし、感染するとキャリア(発症せずウイルス保菌している状態)化します。キャリアの生涯発症率は3~7%です。性器クラミジア検査は、子宮入り口の子宮頚部から分泌される粘液を採取して行います。

また、35週以降の妊娠後期に実施するのがB群用血清レンサ球菌(B群溶連菌)検査です。膣の入り口と肛門内を検査用綿棒でこすり取り、その検体を培養して菌がいるかを調べます。母子感染の原因となる病原体はさまざまで感染経路もそれぞれ違います。赤ちゃんに対する影響も感染する時期によって異なります。妊婦健診をきちんと受けていただき、適切な治療や対策を講じることが母子感染予防につながります。

陽性の場合は母子感染の予防を。
お母さん健康管理も大事です。

HIV感染がわかったら、妊娠中から抗HIV薬による治療を開始します。お産は帝王切開、出産後は人工乳で育て、赤ちゃんにも抗HIV薬を予防投与します。この対策で垂直感染の確率は1%以下に下がります。B型肝炎が陽性の場合は出産直後、赤ちゃんに抗HBs人免疫グロブリンとB型肝炎ワクチンを注射し、感染リスクを軽減します。梅毒は妊娠初期から抗菌薬で治療すると、先天性梅毒の予防効果が高いといわれています。性器クラミジアは再感染防止のためパートナーと一緒に治療しましょう。

B型溶連菌は10~30%の人が保持している常在菌で、確率は低いものの経膣分娩で赤ちゃんが感染し発症すると敗血症、髄膜炎、肺炎を起こす恐れがあります。検査でこの菌が見つかった人や、分娩時に検査結果が出ていない場合は陣痛や破水が始まった時点で抗菌薬を点滴投与します。

また、妊婦健診の項目にはありませんが、出産間際、外陰部に性器ヘルペス感染を指摘された場合は、産道感染を防ぐため帝王切開を選択します(特に初感染の場合)。

HTLV-1のキャリアの方は人工乳が推奨されますが、母乳を凍結して与えるか、リスクを理解したうえで「短期間母乳栄養」という選択肢もあります。

陽性が見つかった項目は、お母さん(母体)の健康にも関係してきます。例えばB型肝炎やC型肝炎の検査が陽性だった場合は、肝炎の定期的な診察や検査が必要です。最近は飲み薬や注射により肝炎ウイルスを体から排除したり、病気への進行を防ぐこともできます。HIV感染の場合は適切な治療によりAIDS(後天性免疫不全症候群)の発症を抑えることができます。HTLV-1養成の方は3~7%が関連疾患を発症することがあるため専門医療機関での診察をお勧めします。

妊娠中はいつも以上に感染予防対策を強化しましょう。

ここ数年日本で問題となっているのが風疹の流行です。妊娠職に妊婦さんが風疹に感染すると、赤ちゃんに白内障や先天性緑内障、先天性心疾患、難聴などを起こすことがあります(先天性風疹症候群)。先天性風疹症候群の発生率は妊婦さんの感染する時期によって異なります※。妊婦健診で風疹ウイルス抗体価が陰性だった場合は妊娠中の感染に注意が必要ですが、採血を行った妊娠初期での感染は否定的となります。

風疹抗体価が低かった人は、出産後は、はしかと風疹を予防するMRワクチンを接種しましょう(授乳中でも接種は可能)。公費で受けられる場合が多いので自治体に問い合わせてみましょう。夫や周囲の人にも抗体検査と予防接種を勧め、社会全体で風疹の流行を防ぐ必要があります。

今(20年4月現在)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が蔓延しています。妊婦さんへの影響や母子感染についてはまだまだわからないことが多いですが、手洗いの必要性や咳エチケットなどが浸透し、改めて感染予防についての知識が社会全体に広がったと感じています。この記事が出るころには自体が収束していることを切に願っています。

※先天性風疹症候群の発症率は妊娠ん7~12週の感染で80%、13~16週で45%~50%、17~20週でも6%、20週以降は0%といわれています。

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