会陰切開はどんな時に必要なの?


赤ちゃんの頭が、なかなか出てこないときなどに行う処置です。

分娩時、赤ちゃんの頭がいよいよ出てくるというときに、「会陰切開」をすることがあります。会陰とは、肛門と外陰部の間の部分を指します。その部分が固くて十分に伸びず、お産がなかなか進まないため、赤ちゃんの頭が出てくるのに時間がかかる場合に行う処置です。

また、赤ちゃんの心音が低下したり、分娩が停滞したりするときに行う器械分娩(吸引分娩・鉗子分娩)の際や、巨大次(出生体重が4000g以上の新生児)、回旋異常(何らかの理由によって、産道を下りてくるときの回転がうまくできない状態)の際にも、会陰切開を行います。

会陰切開を行うかどうかについては、担当の医師や助産師がその必要性やタイミングを判断します。

会陰切開には切開する一夜方向などによりいくつかの種類があり、中でも肛門の方向にまっすぐ切開する「正中切開法」と斜め方向(右または左)に切開する「正中側切開法」がよく行われます。ハサミのような器具で会陰を2~3センチ切開しますが、赤ちゃんの頭が挟まって会陰部の皮膚を圧迫している「ママがとても痛いタイミング」で行うので、切開自体に強い痛みはありません。

会陰の伸びが良い妊婦さんや、赤ちゃんが元気でゆっくり出てきても問題がないと判断された場合には、会陰切開を行いません。初産の人の方が、経産婦さんよりも会陰切開を行う割合が多い傾向があります。

切開を行わないと、約6割の頻度で自然裂傷が起こるとされています。

切開を行わないと、しばしば自然に裂傷(皮膚が裂けてできる傷)が起こることがあり、その頻度は約6割との報告もあります。裂傷が起きないよう、また起きても小さくても済むように、助産師が会陰を保護するための対策を取ります。例えば、赤ちゃんの頭が出はじめると、いきむのをやめて息を吐くように言われますが、それも裂傷を抑えるための対策です。切開を行わないと傷がひどくなるというわけではありませんが切開した方がお産がスムーズに進む傾向があります。

裂傷が起こりやすいかどうかは個人差があり、赤ちゃんの大きさによっても異なります。経産婦は裂傷が起こりにくい傾向がありますが、これは一度以上会陰が伸びたことがあるために皮膚が柔らかく伸びが良いからです。また、年齢が20代前半くらいまでの若い妊婦さんも裂傷が起こりにくいようです。

裂傷を防ぐためには「会陰マッサージ」も有効です。会陰マッサージを行うことによって初産婦さんの裂傷の頻度を85%から76%に低下させたという報告があります。当院では妊娠36週から乳房マッサージとともに会陰マッサージを勧めていて、オイルを使用し膣に親指を入れて肛門側(6時方向)と4時から8時方向を5分ほどマッサージする方法を紹介しています。子宮を直接刺激するわけではないのでそのまま分娩に進んでしまう心配はありませんが、違和感がある場合は無理して行わなくてもいいでしょう。

痛み約1週間で軽減、産後1ヵ月健診のころにはきれいに治ります

会陰裂傷は傷の深さによって1度(軽度)から4度までに分類されていますが、切開した場合はほとんどが2度以内です。局所麻酔を用いて縫合するので、痛みはあまりありません。分娩施設にもよりますが、縫合には2週間程度で溶ける意図を使用することが多く、その場合、抜歯は不要です。ただ、つっぱりが強い時は意図が解ける前に抜歯することもできます。縫合後は傷そのものの痛みや、尿が染みる痛みがありますが、1週間程度でかなり軽減します。痛みが強い場合など、必要に応じて鎮痛剤を使用することもあります。

会陰切開でも、自然裂傷でも、感染を起こさないよう十分に消毒をしますし、コウセイザイヲ服用してもらうこともありますので、傷の回復に差はありません。十分な休息と栄養を取れば、退院後も特別なケアは阿必要なく、普通に過ごしていれば大丈夫。1ヵ月健診の時に診察すると、みなさんきれいに治っています。

多くの妊婦さん、特に初産の人は会陰切開と聞くと「痛そうで怖い」と思うかもしれませんが、会陰切開によるトラブルはほとんどないので心配することはありません。会陰の伸びる幅は赤ちゃんの頭より小さいことが多いので、切開や裂傷はやむを得ない部分もあります。必要最小限となるように努めていますので、安心してお産に臨んでください。会陰切開のことを含め「こういうお産がしたい」「このことがとても心配」などがあれば、バースプランを描くなどして助産師や担当医に伝えるといいでしょう。