「遺伝性のがん」とは、どんな病気?4


Q4 遺伝性のがんから身を守るためには?

A がん検診で早期発見 予防切除の選択肢も


遺伝性乳癌卵巣癌とリンチ症候群の場合、予防治療や早期発見の手段があり、対策が取れます。遺伝性乳癌卵巣癌の家系だとわかった時には、①定期的にがん検診を受ける、②経口避妊薬(ピル)服用で卵巣がんの化学予防、③リスク低減手術(がんが発症する前に卵巣・卵管、乳房を予防的に切除)という選択肢があります。
米国の「NCCN(全米総合がん情報ネットワーク)ガイドライン」では、遺伝性乳癌卵巣癌の人に、「25歳から年1回のMRI検査とマンモグラフィー検査(いずれも乳がん)」「30歳から半年に1回の超音波検査(卵巣がん)と腫瘍マーカー(※)測定」をすすめています。
 リンチ症候群の場合は、定期的ながん検診が対策の中心になります。国際的なガイドラインでは「20〜25歳から2年ごとに大腸内視鏡検査」「25〜30歳から1〜2年ごとに婦人科検診と超音波検診、腫瘍マーカー測定」を受けることが望ましいとされています。
 婦人科の3大がんは子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんです。卵巣がんは進行が早く、早期発見が難しい面がありますが、どのがんも早く見つけてガイドラインに沿った適切な治療をすれば多くは治ります。がん家系かどうかに関わらず、2年に1回は子宮頸がん検診を受け、年に1回は婦人科検診を受けるようにしましょう。お産が終わっても、産婦人科のかかりつけ医を持つことが大切です。※腫瘍マーカー=そのがんが作り出す特徴的な物質

Anetis(アネティス) 2015 秋号 女性の体なんでも相談室より

※こちらは2015年8月時点の情報/記事になります


■ 回答者■


【熊本大学大学院生命科学研究部 産科婦人科学分野教授 片渕 秀隆(かたぶち ひでたか)さん】

1982年熊本大学医学部卒業。ジェンズ・ホプキンス大学医学部病理学講座研究員、熊本大学医学部講師、同助教授などを経て、2004年より同大大学院医学薬学研究部教授、10年の組織改編により現職。日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会委員長、日本癌治療学会理事、日本癌学会評議員、日本婦人科腫瘍学会常務理事、日本婦人科がん検診学会副理事長など。