「低出生体重児」が増えている 3


Q2 どんなリスクがあるのですか?

A 急性期、慢性期の病気や母子関係への影響も


低体重に伴う合併症は、生まれてすぐあらわれる急性期のものと、
成長して大人になってから出てくる万世紀のものに分けられます。
小さい赤ちゃんは肺機能が未熟なままだったり、体に脂肪が足りなかったりすることがあるため、
急性期には「呼吸」と「体温」に問題が起こりやすくなります。
一方、慢性期の合併症としては、胎児期の低栄養が将来の背活習慣病(高血圧や糖尿病など)
リスクを高めることが知られています。
これは、第二次世界大戦時にドイツの占領下にあったオランダで深刻な食糧不足が起こり、
その頃生まれた子供たちが他の世代より高率に生活習慣病を発症したことで明らかになりました。
原因については「低栄養によって遺伝子の仕組みに何等かの変更が加えられる」
「低体重から標準体重へと急激に追いつく過程で体に負担がかかる」などの説があります。

その他、精神面の影響も指摘されています。
小さい赤ちゃんは生後すぐに新生児集中治療室(NICU)の保育器に入ることがあり、
その場合は数日から長いときは数カ月、一年といった期間を母親と離れてすごします。
母子の愛着形成が行われる最も大事な時期のふれあいが妨げられてしまう危険性があるのです。

 

Anetis 2016夏号 妊娠なんでも相談室より

※こちらは2016年6月時点の情報/記事になります


■ 回答者■


【国立成育医療研究センター 政策科学研究部長/臨床疫学部長 森 臨太郎(もり りんたろう)さん】

1955年岡山大学医学部卒業、同大学博士課程修了。新生児科医としてオーストラリア、イギリスの病院で勤務の後、世界保健機関テクニカルオフィサー、東京大学大学院国際保健政策学准教授、国際母子保健研究所所長等を経て2012年より現職。専門は成育保健、国際保健、周産期医学、疫学、政策など。厚生労働省の委託研究で低出生体重児の発症メカニズムや長期予後の解明に取り組む。