胎盤のトラブルには、どんなものがあるの?3


突然起こる常位胎盤早期剥離の前兆を知っておきましょう。


胎盤のトラブルは、位置の異常によるものばかりではありません。前置胎盤と同様、全体の約1%とまれではあリますが、正常な位置に付いている胎盤が何らかの理由で妊娠中やお産の途中ではがれてしまう「常位胎盤早期剥離」が起こることがあります。重症例では、お母さんの大出血や赤ちゃんの脳障害などにつながるケースもあります。
発症を検査などで予測することは難しいため、「持続的におなかが張る」「おなかが板のように硬い(板状硬)」「性器出血がある」「おなかの赤ちゃんが動かない」などの兆候が見られたら、一刻も早く産婦人科を受診することが肝心です。治療法としては、緊急帝王切開により速やかに分娩を終了させることが基本ですが、すでに子宮口が全開大していて経膣分娩したほうが早い場合は、吸引分娩や鉗子分娩で対処します。
常位胎盤早期剥離は、妊娠35~36週ごろに起こりやすく、妊娠高血圧症候群を合併している妊婦さんはリスクが高まるため注意が必要です。また、一度経験している人は次回の妊娠でも発症する確率が高くなります。
胎盤のトラブルは、頻度は低いものの、対応が遅れると命にかかわることもあります。「妊婦健診をきちんと受けて自分の状態をしっかり把握すること」「トラブルの兆候をよく知っておき、異変が起きたら速やかに産婦人科を受診すること」などを心がけてください。

Anetis(アネティス) 2019夏号 読む妊婦健診より

※こちらは2019年6月時点の情報/記事になります


■ お話をうかがった先生■


倉敷成人病センター
周産期センター センター長
山崎史行 先生

1977年岡山大学医学部卒業。同大学附属病院、三菱水島病院、高知県立安芸病院を経て83年より倉敷成人病センターに勤務。「安心安全なお産」「出産難民を出さない」をモットーに、これまで2万件以上の分娩を担当。 2019年1月に岡山県医療功労賞を受賞した。