胎盤のトラブルには、どんなものがあるの?2


胎盤が子宮の低い位置に付いた場合は帝王切開を検討します。


胎盤は通常、子宮の上のほうの位置に形成されます。ところが、まれに正常よりも低い位置に付いたり、子宮の出口に当たる内子宮口の一部、または全部を覆ってしまったりすることがあり、前者を「低置胎盤」、後者を「前置胎盤」といいます。前置胎盤になるのは全体の1%弱で、子宮の手術歴や多胎妊娠などがリスク要因になります。
正常なお産では、胎盤は赤ちゃんが生まれた後にはがれて娩出されます。ところが、前置胎盤の状態で陣痛を迎えると胎盤が先にはがれてしまい、お母さんの大出血や赤ちゃんの貧血、脳障害などを引き起こすことがあります。そのため、前置胎盤や高リスクの低置胎盤(CASE STUDY参照)の場合は、妊娠37~38週を目安に予定帝王切開を行います。手術前には、輸血の準備 (自己血の貯血)や早産予防のために管理入院をしてもらいます。
胎盤の位置は、「経膣超音波検査」でわかります。ただし、妊娠中期までは徐々に上がっていくことが多いため、確定診断は妊娠31週までに行います。胎盤の位置が低いと、おなかの張りなどに伴い「警告出血」(痛みのない性器出血)が起こることがあります。妊娠20週ごろの検査で前置胎盤が疑われたら、無理は禁物。出血があったときは、すぐに産婦人科を受診してください。
緊急帝王切開になるケースも想定されることから、妊娠32週までには、必要に応じて、麻酔科やNICU(新生児集中治療室)を備えた病院に転院します。

Anetis(アネティス) 2019夏号 読む妊婦健診より

※こちらは2019年6月時点の情報/記事になります


■ お話をうかがった先生■


倉敷成人病センター
周産期センター センター長
山崎史行 先生

1977年岡山大学医学部卒業。同大学附属病院、三菱水島病院、高知県立安芸病院を経て83年より倉敷成人病センターに勤務。「安心安全なお産」「出産難民を出さない」をモットーに、これまで2万件以上の分娩を担当。 2019年1月に岡山県医療功労賞を受賞した。