知っておきたい!性感染症のこと 3


Q3 妊娠・出産に影響が及ぶことは?

A 炎症が広がると、不妊や産道感染のリスクも


 

性器クラミジアや淋菌感染症を放っておくと、上行感染といって子宮頸管から卵管、卵巣へと感染・炎症が広がり、さらには腹膜や、まれに肝臓の周囲にまで及ぶこともあります。症状が進むと、下腹部痛や発熱などが起こるようになります。
卵管炎が長期化すると、痛みなどの症状がなくても卵管に膿がたまっていたり、癒着が起こって詰まっていたりする場合があります。すると排卵しても卵子が子宮に戻ってこられず、不妊や異所性妊娠(いわゆる子宮外妊娠)の原因になります。
卵管の不具合によって起こる「卵管性不妊」の多くは、近年、増加している子宮内膜症によるものといわれていますが、クラミジアや淋菌感染症の影響も無視できません。そのため、最近は不妊症で受診した患者さんに対しクラミジアや淋菌の検査も行うようになってきています。

 

その他、妊婦さんが感染に気づかずにいると、絨毛羊膜炎(胎児を包む膜の炎症)を引き起こして流産・早産に至ってしまったり、生まれた赤ちゃんが産道感染によって結膜炎や肺炎にかかってしまうことがあります。現在は、妊娠中の健診でクラミジアの検査が行われており、2~3%の妊婦さんに感染が見つかっています。感染がわかった場合は、赤ちゃんに影響のない薬(前述のジスロマック)を服用して治療します。

Anetis 2016秋号 女性の体なんでも相談室より

※こちらは2016.9.28時点の情報/記事になります

 

 

 


■ 回答者■

【加納産婦人科院長 加納 武夫(かのうたけお)さん】

1977年名古屋大学医学部卒業。同大学医学部附属病院産婦人科助手、同病院産婦人科講師等を経て、91年に医療法人知泉会加納病院(現・加納産婦人科)院長に就任。2016年6月より愛知県産婦人科医会会長を務めている。