賢く使おう!漢方&サプリの基礎知識2


Q2 妊娠中や授乳中に使える漢方薬は?

A つわりやこむら返り、授乳のトラブルも改善


 妊娠中や授乳中に飲んではいけない(禁忌)とされている漢方薬はありません。ただし、飲まないより飲んだ方が利益が大きい場合にのみ使用する「有益性投与」が原則であることは、西洋薬と同様です。
 漢方薬の中には、妊娠中や産後のマイナートラブルによく効くものがあります。例えば、半数の妊婦さんが経験する「つわり」には吐き気を抑える「小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)」、とくに不安や不眠もある「つわり」には「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」がおすすめです。妊娠後期に多いこむら返りに即効性があるのは筋肉のけいれんを抑える「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」、便秘でおなかが張るときは「大建中湯(だいけんちゅうとう)」を試してみましょう。
 産後は疲れやすく、分娩時の出血で貧血になる人も少なくありません。慣れない育児でイライラや不安が募り、3〜4割がマタニティーブルーズと呼ばれる気分の落ち込みを経験するといわれています。心身が弱っているこの時期に有効なのが「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」と「加味帰脾湯(かみきひとう)」。いずれも体力・メンタルの回復と貧血の改善に役立ちます。ちなみに、育児疲れで怒りっぽくなったときは、「抑肝散(よくかんさん)」を飲むと落ち着くでしょう。抑肝散は「子供の夜泣き・疳の虫」にも効能があり、「母時同腹」(母子で一緒に飲むこと)により効果が高まるといわれています。
 授乳中に乳腺が詰まって腫れや痛みが出たときは、「葛根湯(かっこんとう)」を飲むと症状が抑えられます。

Anetis(アネティス) 2017秋号 女性の体なんでも相談室より

※こちらは2017年9月時点の情報/記事になります


■ 回答者■


【名古屋大学医学部附属病院 産婦人科 准教授 梶山 広明(かじやま ひろあき)さん】

日本産科婦人科学会専門医、日本婦人科腫瘍学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医。大学病院では主に子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんなど婦人科腫瘍を専門としており、がん治療における妊孕性温存(妊娠・出産の可能性を残すこと)にも力を入れている。趣味は古墳・街道めぐり、植物の種の収集、地形マニア。好物はラーメン。