子育ては発見と驚きの連続。“父親OS”インストールしよう


共働き、晩婚化…ママを取りまく環境は大きく変わっているのに、パパの意識は変わらないまま。

古い価値観を脱してイクメンになってもらうには?ファザーリングジャパン代表の安藤哲也さんに聞きました。


古い価値観を捨てOSを入れ替える

イクメンという言葉も市民権を得て、育児に積極的なパパが増えてきました。しかしその一方で、消極的なパパもまだ少なからずいます。その差は決して能力の問題ではなく、私たちの意識をはじめ日本の社会全体に、「働いて家族を養うのがパパ、家事育児はママの役割」という古典的な価値観が根強く残っているのが大きな理由です。

それはママの意識の中にもあり、「やらねば」と一人奮起して行き詰ってしまうことも。そうならない為にも、産後パパはまず古い価値観を捨て、意識改革をしましょう。脳内に”父親OS(オペレーティング・システム)”をインストールするのです。OSが入れ替わると、仕事中心の生活から脱却でき、なるべく早く帰宅し、育児をママと協業するようになります。かくいう私も古い因習にとらわれていました。娘や息子が生まれたことで、「育児は楽しい権利」「子供のいる人生を謳歌したい」と悟るようになったのです。

意識改革は自分の力だけではなかなかできにくい。自治体が開く両親学級や、私たちNPOが主催しているような父親セミナーなどを積極的に受講してください。父親が育児に関わることによる子どもの発達・成長の話や、育休を取得し仕事と両立しながら育児を楽しむ多様な父親のロールモデルを知ることで、自分の中の古いOSが入れ替わることでしょう。

受講するメリットは、正しい知識や情報取得のほかに、同じ悩みや境遇を持つパパ友と知り合えること。お互いに情報交換することで、不安が払拭され、道が開けることもあります。それでも消極的な場合はママから促すのではなく、医療関係者やパパが尊敬する恩師、上司から助言してもらうよう働きかけてみてください。「男性からパパへ」が肝心で、自発的に参加してみようと思わせるのがポイントです。

出産期のパパへの指導や教育こそが、最大の母親支援、育児支援になります。とはいえ、育休を取りにくい事情が日本社会にまん延しているのも事実です。パパ本人だけでなく、父親にとって育児がしやすい環境について、働き方を含め社会全体がその在り方を見直さなければなりません。

ママを支えることが育児につながる

寝不足やストレスでへとへと。日々家事や子育てに奔走するママを、パパは支えてあげましょう。家事の分担はもちろん、出生証明の手続きや保育園を探す活動などは、休暇を取得してパパが行うべきです。乳飲み子を抱えて役所で交渉するのは大変。父親としての自覚を示し、バックアップすることでママを安心させてあげてほしいです。

精神的なケアでは、日々家事や育児に追われるママに感謝し、「がんばってるね」とねぎらいの言葉をかけてあげることも忘れずに。子育ての感動や成長を分かち合いたいと語りかけてきたら、きちんとその言葉に耳を傾けてください。

ママの気持ちは満たされて、次の日も笑顔で子どもと向き合えます。子どもがすくすく成長する最大のファクターはママの笑顔。いつも泣いている姿では子供も幸せになりません。ママの笑顔こそが情報を安定させ、健やかな精神を育むのです。

つまり、ママを支えることは間接的に立派な育児と言えます。パパはこの視点を持ち、行動してほしいです。ママに感謝し、精神的に支えることで、ふたりの絆も強まり、育児は楽しくなっていきます。

将来のライフプランをデザインする

最後にもう一つ。家族皆が幸せに生活するためのライフプランを普段からよく話し合いましょう。病気で働けなくなる、急な転勤、親の介護など人生の困難に直面した時、どのように解決するか。常にリスクヘッジ、プランBを考えておくと安心です。

ママの仕事の収入がパパに負けないくらい多く、産後も働きたいのであれば、パパが主夫となり家庭を支える選択肢だってあります。人生設計は千差万別。柔軟に考え、一つに縛られる理由はありません。教育や老後のマネープランも含め最善の青写真を共有しましょう。

新型コロナウイルスの感染拡大で人生設計を狂わされた人も多いと思います。そのような中、DV被害や家庭崩壊が増えたことは残念です。それはほんの小さなボタンの掛け違いがきっかけで、普段からコミュニケーションが取れていれば、防げたかもしれません。働き方が在宅ワーク中心に変わった今、これを機に話し合う時間を増やしてみてください。非常時の備えは平時から。事前に対策ができていれば、乗り越えられます。