産婦人科ドクターご夫婦 Interview


あまり心配し過ぎないで、その子をよく観察してあげることが大切だと思います。

「仕事が忙しくても上手にオン・オフを切り替えて子育てできるといいですね」

医大の同級生というお二人は、中学1年の長男を筆頭に小学4年の次男、小学2年の長女という3人の子どもを育てる“ベテラン”のパパとママです。太一さんは主に婦人科がんの治療を専門にするかたわら、新たな不妊治療を目指す基礎研究にも力を入れていて、忙しい毎日を送っています。

一方、妊娠・出産を機にフルタイム勤務を離れた由砂さんは、現在は子育てが一段落したこともあり、埼玉県内の病院のほか、週1回は静岡県にある太一さんの実家の婦人科クリニック、月2回は同じく静岡県内の障碍者施設と、4カ所で非常勤務医師として働いています。

医師でも親としては素人
苦労はたくさんあります

3人の子育ての中でも、やはり1人目の時が一番大変だったと記憶に残っているそうです。実家は遠方のため両親のサポートもなく、二人で乗り越えるしかなかったと振り返ります。

「長男の妊娠中はつわりが酷くて入院し、8カ月目くらいの時に切迫早産でまた入院。結局そこから少し長めの産休に入りました」(由砂さん)

分娩は帝王切開で、太一さんが執刀しました。帝王切開は初めてではなかったものの、自分の子供ということでかえって緊張して手が震えてしまったとか。

初めての育児が始まると、「医学的な知識はあっても、赤ちゃんを育てるのは素人なので苦労しました。しかも僕は、仕事が忙しくてなかなか家にいられなかった。だから家に居る時は協力できることを考えながら、言われたことはやる、文句は言わない、と心掛けていました」と太一さん。

由砂さんは産後半年ほどで非常勤として仕事に復帰しました。

約2年半のアメリカ生活の間、ママは専業主婦に

第3子が4歳になったばかりの2016年、太一さんが米国・ボストンの大学に勤務することになり、一家そろって渡米し、約2年半をボストンで過ごしました。

その間、専業主婦業を経験することになった由砂さんですが「ボストンでは子供の学校や習い事のつながりを通して友達がたくさんできましたし、子育て環境はすごくよかったです」。そしてアメリカのパパたちの育児参加が積極的なことに感心したと言います。「習いごとの送迎はパパ担当。オン・オフがしっかりしていて、子供とのかかわりを大切にしていると実感しました」と由砂さん。

共働きの赤堀家では、家事育児の9割を担当しているのは由砂さんですが、できるだけ関わろうとしている太一さんの意思は伝わっているとか。

「妊娠・出産によって彼女はキャリアアップを諦めなければならなかった。今後もう一度キャリアアップを目指すなら、そのために手伝えることは、何でもするつもりです」(太一さん)

過度に心配することなく、子供をよく観察してあげて

子育ての上で大切にしていることは「子供を否定しないこと」(太一さん)、「褒めること」(由砂さん)というお二人は、これから赤ちゃんを迎えるママとパパに「雑多な情報に流されて心配し過ぎず、子供のことをよく観察してあげるのが大切」とアドバイスをくれました。

医師である赤堀夫妻でさえ、長男の言葉の発達などが遅いのでは、と心配し、専門医に相談しようかと考えたことがあったといいます。でも今思えば、平均よりほんの少し、話始めたり歩き始めたりするのが遅かっただけなのです。

また、ママのストレスがたまって爆発することもあるでしょうが、それが大事に至らないようにするにはやはり夫婦のコミュニケーションが必要。話す時間が無ければメールやSNSでもいいのでは、と言います。

最後に、「妊娠・出産は家族のスタートです。私たち産婦人科医は、妊産婦さんが最良のスタートを切れるようにサポートしたいと考えています。今は新型コロナウイルス感染症の流行もあり心配なことが多いと思いますが、医療機関はしっかりと対策しているので安心して受診してくださいね」(太一さん・由砂さん)と、心強いメッセージをいただきました。