「遺伝性のがん」とは、どんな病気?1


Q1 がんには遺伝するものがありますか?

A 全体の5〜10%が遺伝性のがんです


国民の2人に1人ががんになる時代になり、日本では年間約80万人ががんと診断されています。がんの患者数は30年前の3倍以上に増えています。
 がんは正常な細胞の遺伝子に傷がつき、異常に増殖することで発症します。その要因は一つではなく、がんの90〜95%は、図のようなさまざまな生活環境の因子が重なることによって起こります。身内にがん患者がいなければがんにならないと思っている人もいるようですが、ほとんどのがんは遺伝とは関係がないのです。
 一方、遺伝と関係のある「遺伝性のがん」は、がん全体の5〜10%です。遺伝性のがんにはさまざまな種類がありますが、女性の生殖臓器に関わるのが「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)」と「リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)」です。
 ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、2013年に、遺伝性乳癌卵巣癌であることを公表し注目を集めました。日本人女性が一生のうち乳がんになる確率は8%、卵巣がんは1%ですが、遺伝性乳癌卵巣癌の場合、乳がんになるリスクが41〜90%、卵巣がんは8〜62%と高率になります。また、男性なら前立腺がん、男性の乳がん、膵臓がんになりやすいことがわかっています。
 それから、大腸がん、子宮体がん、卵巣がんなどになりやすいのがリンチ症候群です。

Anetis(アネティス) 2015 秋号 女性の体なんでも相談室より

※こちらは2015年8月時点の情報/記事になります


■ 回答者■


【熊本大学大学院生命科学研究部 産科婦人科学分野教授 片渕 秀隆(かたぶち ひでたか)さん】

1982年熊本大学医学部卒業。ジェンズ・ホプキンス大学医学部病理学講座研究員、熊本大学医学部講師、同助教授などを経て、2004年より同大大学院医学薬学研究部教授、10年の組織改編により現職。日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会委員長、日本癌治療学会理事、日本癌学会評議員、日本婦人科腫瘍学会常務理事、日本婦人科がん検診学会副理事長など。