歯医者さんと一緒に、自分の歯を守ろう


■安定期に入ったら妊婦歯科健診を受けよう


妊婦さんに交付される母子健康手帳は、ママの妊娠・出産から子供が小学校に入学するまでの健康状態や発育の様子を記録するためのものですが、この中にママの歯の状態を記録するページがあるのをご存じですか?
ホルモンバランスの関係でむし歯や歯周病にかかるリスクが高まる妊娠中は、普段にも増して口中のケアが必要です。そのため、特に痛みや腫れなどの症状がなくても、妊娠したら少なくとも1回は歯科健診を受けましょう。
自治体から届く受診票を利用すれば、地域の歯科で、無料で受診できます。むし歯や歯周病がみつかった場合は安定期の4~5カ月を目安に受診するのがおすすめです。
健診ではむし歯や歯周病の有無、プラーク(歯垢)の有無、日ごろのケアの状況をチェックします。より詳細に診察するためにレントゲン撮影をすることもありますが、被ばくのリスクは小さいといわれています。どうしても心配なら事前に産婦人科医とよく相談してから半断してください。
妊婦歯科健診の無料受診票を利用できる歯科医院は、自治体のホームページなどで調べることができます。かかりつけの歯科医がいるなら、まずは相談してみましょう。

■口中の健康を守るためにはプロのケアが欠かせない


妊娠中、特につわりのひどい時期は歯みがきがおろそかになりがちですが、むし歯や歯周病を予防するには、一に「歯みがき」、二に「歯みがき」。
特別なケアをする必要はあリませんが普段から「食べたらみがく」を習慣にして、なるべく口の中を清潔に保つように心がけましょう。ただ、どんなに丁寧に歯みがきしているつもりでも、多かれ少なかれみがき残しはあるもの。プラークを残したまま放置すると、歯石に変化して除去しにくくなってしまいます。
また、歯周ポケット(歯と歯ぐきの境目の溝)の汚れも、ブラッシングだけでは除去することができません。そのため、歯石や歯周ポケットの汚れはなるべく早めに歯科医院で取り除いてもらう必要があります。
最近は多くの歯科医院で、予防歯科の一環として「PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)」を行っています。これは単なる「歯石とリ」だけではなく、専用機器を使って歯の表面や歯間、歯周ポケットの汚れを徹底的に取り除くクリーニング方法です。歯に付着したバイオフィルム(さまざまな細菌の塊)までみがき落とし、最後にフッ素でコーティングを施すため予防効果も長持ちするといわれていますが、半年に1回ぐらいの頻度で受けるのが理想的。妊婦歯科健診で特にトラブルを指摘されなくても、体力的に余裕があれば、歯科医院で一度クリーニングをしておくと安心です。

■赤ちゃんのためにもかかりつけ歯科医をみつけて


ここまで妊娠中の歯科健診を中心に紹介してきましたが、本来は妊活中・妊娠中・産後にそれぞれ1回ずつ歯のチェックを受けるのがベストです。ママの歯の健康はそのまま赤ちゃんの歯の健康につながるので、妊婦歯科健診をきっかけに、かかりつけの歯科医をみつけておきたいですね。
かかりつけ医を選ぶ基準は人それぞれですが、定期的に通うことを考えると自宅や職場に近いことがポイントです。最近では、妊婦さんを気遣ってくれる女医のいるところや、赤ちゃん連れでも安心して受診できるところも増えていますので、産後も長くおつきあいできそうな歯科医院を探すといいでしょう。また、小児歯科を掲げている歯科医院なら、赤ちゃんの歯も一緒に診てもらえるのでおすすめです。

■むし歯菌を赤ちゃんに感染させないためにも定期的に健診を受けましょう


ママだけではなく、家族みんなでロ中ケアを! ママがむし歯や歯周病にかかっていると、赤ちゃんの歯の健康にも悪影響がありますが、それはパパやおじいちゃん、おばあちゃんなど身近な家族でも同じこと。接触が多いほど、赤ちゃんは周囲の大人からむし歯の原因菌や歯周病菌をもらってしまいます。つまり、赤ちゃんのお口の健康を守るためには、家族全員の口中ケアが必要なのです。できればママだけでなく家族みんなで、かかりつけの歯科医にチェックしてもらいましょう。

 

Anetis(アネティス) 2020春号 [赤ちゃんとママのための歯科教室]より

※こちらは2020年1月時点の情報/記事になります


■ お話をうかがった先生■

岡部佑妃子先生写真
岡部佑妃子 先生
(岡部歯科医院)

山梨県出身。日本歯科大学卒業。日本歯科大学附属病院で研修後、予防歯科、小児歯科、矯正歯科を専門とする。現在は山梨と東京で診療並びにマタニティー歯科の啓発活動を行っている。