妊産婦さんのための「妊娠中・産後の食生活」教室3


産後のママが気をつけることは何ですか?


—実は不足しがちなビタミンD。

授乳期に不足が見落とされがちな栄養が、骨の成長に欠かせないビタミンDです。カルシウムだけをたくさん取っても、ビタミンDが足りなければ十分に吸収されません。私がおすすめする食材は、ビタミンDとカルシウムの両方が豊富に含まれるシラス干し。またはキノコ類、特に干しシイタケです。シイタケは紫外線に当たるとビタミンDがぐんと増えます。妊娠中から積極的に取ってもらうとよりよいでしょう。
ビタミンDの生成には適度に日光に当たることも重要です。日焼けを気にされているママもいらっしゃると思いますが、真っ黒になるほど日に当たる必要はありません。赤ちゃんと一緒 にお散歩をしながら体の一部を出す程度で構わないので少し気をつけてみてください。

—「プレコンセプションケア」の考えを次世代に。

産後に「早く体形を戻したい!」という方も多いでしょう。しかし焦って、摂取するエネルギーを急激に減らすのは体に負担がかかるだけです。もともとが標準体形であれば、授乳期間が終わってから食事量を妊娠前に戻すだけで大丈夫です。体重・体形は徐々に元どおりになっていくはずです。
そもそも日本の妊婦さん、さらに将来妊娠する可能性のある若い女性たちはスリムな体形へ過度な憧れを持っていると感じます。国内では今「プレコンセプションケア」という考えが広まりつつあります。早い段階から妊娠・出産に関する知識を持ち、自身の心身の状態への意識を高め、赤ちゃんを授かる準備をすることを意味する言葉です。残念ながら日本はこの分野に関する若い人たちへの教育が十分とは言えません。本来であれば体重の管理は、妊娠前から行う のがベストですが、若い女性の間にはまだまだ妊娠中・産後の健康を度外視して、「食事を減らしてでも痩せたい」という考えが根強いのも実情です。無理なダイエットで体調を崩して体重コントロールができなくなり、肥満に悩む人も少なくありません。
妊娠・出産は女性が自身の体のことについてじっくり学ぶ機会になり得ます。そして母子の健康は妊娠前・妊娠中、そして出産後にわたって考えていかなければならない重要なトピックで す。ママが学んだ食事や栄養の知識は ぜひご家族と共有してください。そして次の世代であるお子さんにも伝えていってほしいです。

Anetis(アネティス) 2019-20冬号 [かかりつけの産婦人科医を一生のパートナーに]より

※こちらは2019年11月時点の情報/記事になります


■ お話をうかがった先生■


愛媛大学医学部
産科婦人科学 教授
杉山 隆 先生

2002年三重大学大学院医学系研究科産科婦人科学講座助教授。12年東北大学大学院医学系研究科産科婦人科学講座准教授。15年愛媛大学大学院医学系研究科産科婦人科学講座教授、16年同大医学部附属病院周産母子センター長兼任。18年より同病院副院長兼任。